September Records

セプテンバーレコードの店主です

オープンから5年が経ちました。

午前9時、3年半振りに髪を短く切ってもらった。それから自動車運転免許を更新に行くも時間が合わず、引き返して登山用品店に入った。

 

欲しかった靴下やクーラーバッグを手に取り、新しいレインウェアを物色していると、昨日登った山でライターを貸してくれた方に良く似た方が隣にいるではないか。

 

instagramの記事を参考にどうぞ)

https://www.instagram.com/p/CUEzJiPvjyD/?utm_medium=copy_link

 

しかも彼は店員だった。目が合ってしまい「何かお探しですか?」と優しく話かけられたので、「いや、、あの、昨日赤城にいらっしゃいましたか?」と勇気を出して返した。

 

変な間があった後「あ、はい、、」と戸惑った様子だったので、「ライター貸して頂いたものです」と親指でジェスチャーすると、ようやく気づいて笑顔を返してくれた。

 

「ちゃんと使えましたか?」「はい!ありがとうございました!ちゃんとお湯沸かせました!」みたいな会話ですぐに終えたが、勢いに任せて連絡先くらい聞いても良かったかな、、でもホントに聞いたら気持ち悪がられるだろうから、やっぱりやめて良かったと思う。

 

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今日はセプテンバーレコードが5年前に(プレ)オープンした日。個人的にもまた一つ歳をとったので、スーパーで一番大きくて安い肉(350g 880円)を買ってきて焼いてやった。

 

これまで沢山の方にお越し頂いて、レコードを買っていただいたり、音楽を中心とした話、人によってはさらに踏み込んだ話などもできて、余裕はないけども、おかげさまで楽しい日々を送る事が出来ています。

 

もしレコード屋をやっていなかったら、今頃どうなっていたであろうか、、。

 

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8年前の春、体調不良で東京から群馬に一時帰省していた時は、ほんとにドン底でした。居場所もなく、東京に戻ることばかり考え、空回りして何一つ思うようには行かず、長いこと暗中模索の日々が続きました。

 

〜中略〜

 

5年〜5年半くらい前にかけて、群馬での生活に兆しがみえるような方々との出会いがありました。

 

皆それぞれ街で生活しているだけなのに、見えない役割のようなものがあって支え合っている感じ、何よりも居場所があることが羨ましく、みんなキラキラして見えました。

 

僕も地元でそのような場所をつくれないか、誰かの生活の一部になることが出来ればいいなと、思い切ってレコード屋をやろうと決心しました。Glim Spanky「大人になったら」を聴いたことによる啓示も丁度その頃です。

 

未だコロナ禍で辛い日々が続いています。そんな中でも来店してくれる方々とマスク越しにする会話や、通販時にメッセージを書いたり頂いたり、、オープン当初に考えていたことが、5年目にして少しずつ実現できているかも知れないなと思っているところです。

 

レコード屋としていつまでできるか分かりませんが、僕なりにやれることを考えて、細く長くやっていけたら嬉しいです。いつも気にしてくれているみなさんに本当に支えられているなと常に感じていますし、上手く言えませんが感謝してもし切れません。

 

だいぶご無沙汰の方も、まだの方も思い出した時に遊びに来てくれたら嬉しいです。

 

今後ともセプテンバーレコードをよろしくお願いします。

 

(明日は13-18時で臨時営業します)

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mid90s

 

mid90s、自分にとってはearly90s。小学校の授業が終わると家に飛んで帰り、すぐさまスケボーに乗って学校へ戻ると、誰とつるむ訳でもなく暗くなるまで遊んだ。たまにグラウンドの東の空に浮かんだ月が大きくて不気味だった。

 

トレノに乗る従兄弟たちに教えてもらった音楽はB’zのLADY NAVIGATIONとピンクサファイアのP.S. I LOVE YOU、高崎にあった「る〜パン」でピザを食べたり、レンタルCD屋に連れてってもらったり、毎週のように新しい遊びを教えてもらった。

 

中学1年の時、野球部の先輩がタバコを吸いながら部室でイチャこいているところに遭遇してしまった。背後から腰元のような奴が飛びかかってきて殴られた。部室に道具を取りに行っただけなのに、、奴は何をしてたのか知らないが、ゲートすら守れずミスの腹いせに手を出してきた哀れな男の顔は今も忘れられない。

高校の頃、吹奏楽部と軽音部を行ったり来たりし、先輩には何回か飲まされたがビールは不味かったし、タバコを初めて吸ったのは20歳の誕生日にもらったハイライトだった。

 

自分にはスケボーも音楽もあったけど、もし映画のような環境だったらどうだったろうかと、過ぎ去った90’sに想いを馳せた。

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火花

昨日、最終上映日だった映画を観に行く為、シャワーを浴びて着替えをしていると、携帯に予期しない予定が入ってしまった。急いで車に乗って出かけてみたものの、結局映画には間に合わなかった。

 

ノンアルコールビールとつまみを買い込み、仕方なく家で『火花(ドラマ版)』の残りを一気観することにした。全て観終わったのは22時頃、思わず号泣したのは第9話だったが、最後まで良いドラマだったと思う。

 

馴染みのある吉祥寺や新宿の風景は没入するに丁度良かった。登場人物に自分を重ねてはいなかったが、高校時代に一緒にバンドをやっていた友達Mのことが何度も頭をよぎった。

 

地元に帰ることは殆ど誰にも言わなかった。すぐ戻ると信じていたから、最後に彼と連絡を取ったのは既に9年も前になっていた。

 

今頃何をしているのだろう。アドレス欄には番号も入っているが、用事もなくかけるのも気が引ける。SNSをやっているタイプではないし、そうやって隠れて覗き見したいと思う種類の友達ではない。きっとまた直ぐに会えるだろう、、そう思って長い時間が過ぎていた。

 

彼だけではない、大学時代につるんだバンドメンバーとは皆それっきりだし、SNSで繋がっている東京の友達とも殆ど会っていない。たまにメッセージをやり取りをしている友達とも、そうして疎遠になってしまうのかなぁなどと思ったりした。

 

今日店は混雑することは無かったが、お客さんが殆ど途切れなかった。一度もゆっくりする事なく、気がつくと窓の外は真っ暗になっていた。随分陽が落ちるのが早くなったなぁと、丸椅子に腰を落とすと同時、入り口の扉が開いた。

 

「こんにちは」と投げかけた先には、Mが立っている様に思えた。よく似ているがマスクをしている為確信はない。昨日の今日の出来事にまさかとは思ったが「Mか?」と尋ねてしまった。

 

「あ、違います」という呆気ない応えが返ってきてしまい、恥ずかしさと行き場のない感情を「最近目が悪くなってしまって、、」と誤魔化した。

 

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そんな昨日からのことをMの携帯にメールしてみようと思ったけど、気持ち悪がられるのでやめておいた。年末までには「レコード屋始めたから遊びに来て」と連絡してみようと思う。

 

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アンナ・カリーナ

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66年フランス制作映画「ANNA」は、リマスターによって鮮やかに蘇ると共に、2020年高崎から1998年渋谷へとタイムトリップさせてくれた。

 

当時映画配給会社で働いていた友だちにチケットをもらって劇場で観たあと、あまりの素晴らしさに今度はチケットを買って観た。あの頃はなかなか見れなかったフランス映画がたくさんリバイバル上映されたから端から観たし、レコードも沢山再発・発掘された時代だった。そんななか断トツに衝撃的かつカッコイイ映画・音楽が「ANNA」だった。

 

もちろんゲンズブールの他の作品も沢山再発され、端から買って聴きまくったけど、個人的に「ANNA」に勝るレコードは無かった。

 

《フランスにいた頃、フリーマーケットでオリジナル盤を見つけたものの、400ユーロ(当時のレートで68,000円位)と言われ落ち込んで帰ったのを昨日のように覚えている。》 


今日同じように映画館で鑑賞したら、当時バイトしていたレコード屋のことや、いつも遊んでいた仲間のこと、嫌いだったアイツのことや、好きだった子のことをまるっと思い出して、珍しく今頃みんなはどうしているのかなと思ったりした。

 

 

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98年の週末、いつものクラブでのこと。

 

ヨーロッパの映画に出てくるような愛称で呼ばれている、誰とも群れないかわいい女の子から、帰り際に突然「引っ越すからレコードプレーヤーあげるね」と、送り先の住所を尋ねられた。

 

2人きりで話したのはこれが初めてだったと思う。明るくなってきた外を目指し一緒に階段を登り店を出ると、彼女は停めてあった自転車に乗り三茶方面に消えて行った。

 

数週間後、ゆうパックで届けられた伝票の発送元には、漢字で古風なフルネームが書いてあった。あの愛称とのギャップに、よくわからない熱い想いが込み上げてきた、のを思い出した。

 

その後一度も連絡は取り合わず、今は彼女の顔も名前も覚えていないけど、レコードプレーヤーはまだちゃんと回っている。

 

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20歳の誕生日

20歳の誕生日、ロックの象徴として憧れていたジャック・ダニエルの酒瓶が実家から送られてきた。同封されていた手紙には「人の迷惑にならないことなら何をやってもよい」的なことが書いてあった。

 

その頃毎日のように通っていたレコード屋を出たあとに向かった楽器屋の隅で、「ギタリスト募集!」という一枚のチラシを目にした。そのバンドは女性ボーカルと男性ギター・ベース・ドラムの四人組で、最近ギタリストが脱退したらしく、新しいメンバーを探しているという。

 

大学のサークルで組んだぬるいバンドに飽きてしまっていたから、書いてあった番号に直ぐ連絡をいれた。そして彼らのライブを下北沢シェルターへ見い行き、後日オーディションに為スタジオに入った。

 

初期JUDY & MARYをよりシンプルにしたようなバンドで、正式メンバーになったのはその週数間後。すぐさま横浜近くの大学へ機材を持ちよりレコーディング。主に下北沢シェルター横浜CLUB24を拠点とし、ドブ板通りにある横須賀かぼちゃ屋でライブをした辺りは、なんかバンドやってる感があって楽しかった。

 

洋楽ばっかり聴いていた自分と、邦楽ばかり聴いていたリーダーとは方向性の問題など色々あった。その頃デビューしたての椎名林檎8cmCDを聴いて、自分の才能の無さを再確認させられたし、もやもやした気持ちでバンドをしているうち、同じレーベルにいたほぼ同期のバンドは華々しくデビューしていったり、、このバンドに居るべきか常に悩んでいた。

 

ライブをやる度に辞める理由を探しているのは辛かった。結局所属レーベルが変わることになったのを機にバンドを脱退。その後はバンドらしいバンドを組むことは無かった。そして最初から馴染めていなかった大学も辞めた。

 

そうやって中途半端に投げ出された社会、いくつかのアルバイト先では運悪く理不尽な人に頭を悩まされた。たとえ大人になったとしても子供じみたいじめは蔓延っていることがショックだった。出る杭は打たれ、やがて行く場所はなくなり、その場を去ることでしか状況は変えられないと思っていた。

 

ある日のこと、癒しとなっていたはずの行きつけの雑貨屋の店主から「先のことばかりで、今の自分が見えていない」と核心をつく言葉を突きつけられた。いつの間にか、周りで出世した人を自慢して自分も出世した気になったり、不満を撒き散らすだけでやるべき努力をしていない、ダメな人間になっていたのだ。

 

まだ20代前半の頃に運良く気づかせてもらえて、それからの人生ががらっと変わったと思う。照れくさく感謝の気持ちを伝えに行くまで3年以上かかった。

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22年前の成人の日は大雪で、都内に住んでいた僕には帰省するのが難しく、行くつもりじゃなかった成人式を欠席する理由ができて丁度良かった。

 

二十歳になったら"おとな"扱いをされ、幾つになっても心無い"おとな"風の人に惑わされ、周りから"おとな"になることを強要されるのがこの世。

 

それでも"おとな"を避けてたどり着く、この世の果てのような所に集まった少数のにんげんは、大多数の"おとな"を俯瞰しながら、"おとな"になんかなりたくないと死ぬまで言い続けることだろう。

 

だから成人式を欠席してバツが悪い思いをしている新成人は、両親に感謝の気持ちを伝えたあと、セプテンバーレコードに行き「バレーボウイズ / 卒業」買うことをオススメします。

待合室で読んだスラムダンク

ここ数ヶ月間色んな病院に行く事があった。特に耳鼻科の待ち時間は長く、花粉のピークは通り過ぎた先日、再診にも関わらず3時間以上待った。

 

その日は院長が休みだったらしく、待合室はパンパン。自分の番が回って来たとき、担当の先生はあきらかに憔悴仕切っていて可哀想だった。

 

診察結構適当だったけど、あの人数みてたらしょうがないよ、にんげんだもの。とか思ってしまった。

 


生活に適度な運動を取り入れようと、室内で走り回れるスポーツを探してたどり着いたバスケットボール。全く知識はないし、まずは漫画で情報を得ようと、未読のスラムダンクを全巻買い、病院の待合室で読み始めた。

 


昨日は朝9時から待合室の端っこに座り、完全版の22巻から読み始めたのだが、最終巻、写真のシーンで一人大泣きしてしまった。

 


うるうる状態のまま、高崎でバスケットが出来るところを検索したが、気軽に出来るところって全然ないんですね、、。体育館は抽選だし、外でもゴールがあって舗装されてて怖くないところがあれば、、、諦めないでボール買わないと。

 

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GLIM SPANKY / 大人になったら

「GLIM SPANKY / 大人になったら」という曲は、これまで世知辛い世の中だったけど、かっこ悪くも生き抜いてこれたことを全肯定してくれたし、なにより何もない田舎でレコード屋をやることを大きく後押ししてくれた、自分にとって大切な曲。

 

歌詞にある「レイバンとレコードを買ったあの店」のように、わかってくれる人から深く愛される店にしたいと思い、今まで頑張って来たつもりだ。

 

「どんなことが起きようとも 好きなものは好きで

綺麗なものは綺麗と思える人でありたい」


と、レミさんは語る。僕も同じ気持ちでいるし、限られた時間はそんな人たちと共にしたいと思っている。


これまで沢山良いお客さんやミュージシャンとの出会いがあり、お店をやってきて良かったとしか思っていないのだが、今日、この曲を書いて歌っているレミさんがご来店下さって、太鼓判を押されたような気がした。


あわあわと、そっと差し出した手をギュッと握り返してくれた。オープン以来店に掲げていた「大人なったら」のアナログ盤はじめ、グリムの全アナログにサインをして頂いたり、オススメのレコードを沢山買って頂いたり、、これまでの思いを頑張って伝えられて良かった。直視出来ないほど、優しさに包まれた天使のような方だった。

 

「こんなロックは知らない 要らない 聴かない君が

上手に世間を渡っていくけど

聴こえているかい この世の全ては

大人になったら解るのかい」


この曲をテーマにして明日からも変わらずレコード屋をやっていこうと思う。

 

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