アンナ・カリーナ
66年フランス制作映画「ANNA」は、リマスターによって鮮やかに蘇ると共に、2020年高崎から1998年渋谷へとタイムトリップさせてくれた。
当時映画配給会社で働いていた友だちにチケットをもらって劇場で観たあと、あまりの素晴らしさに今度はチケットを買って観た。あの頃はなかなか見れなかったフランス映画がたくさんリバイバル上映されたから端から観たし、レコードも沢山再発・発掘された時代だった。そんななか断トツに衝撃的かつカッコイイ映画・音楽が「ANNA」だった。
もちろんゲンズブールの他の作品も沢山再発され、端から買って聴きまくったけど、個人的に「ANNA」に勝るレコードは無かった。
《フランスにいた頃、フリーマーケットでオリジナル盤を見つけたものの、400ユーロ(当時のレートで68,000円位)と言われ落ち込んで帰ったのを昨日のように覚えている。》
今日同じように映画館で鑑賞したら、当時バイトしていたレコード屋のことや、いつも遊んでいた仲間のこと、嫌いだったアイツのことや、好きだった子のことをまるっと思い出して、珍しく今頃みんなはどうしているのかなと思ったりした。
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98年の週末、いつものクラブでのこと。
ヨーロッパの映画に出てくるような愛称で呼ばれている、誰とも群れないかわいい女の子から、帰り際に突然「引っ越すからレコードプレーヤーあげるね」と、送り先の住所を尋ねられた。
2人きりで話したのはこれが初めてだったと思う。明るくなってきた外を目指し一緒に階段を登り店を出ると、彼女は停めてあった自転車に乗り三茶方面に消えて行った。
数週間後、ゆうパックで届けられた伝票の発送元には、漢字で古風なフルネームが書いてあった。あの愛称とのギャップに、よくわからない熱い想いが込み上げてきた、のを思い出した。
その後一度も連絡は取り合わず、今は彼女の顔も名前も覚えていないけど、レコードプレーヤーはまだちゃんと回っている。