September Records

セプテンバーレコードの店主です

不器用

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昨日のこと。来月企画しているライブイベントのチケットを買う為に来てくれたお客さんは、仕事をしながら歌を作って歌っている人。

 

数年前に転勤で群馬に引っ越し来たけど、知り合いがいない為ライブをやれる場所を知らず、うちの店に相談に来てくれた。

 

その時はまだ音源は全く無かったようだったので、どんな曲をやっているのか聴かせて欲しい言うと、一ヶ月後にちゃんと弾き語りのデモテープを作って持ってきてくれた。

 

彼が持つ人に対しての距離感や、ボソボソと喋る感じ、そして他の人にはみられない素直な性格に、どうにかしてあげたい気持ちと、そっと見届けたい気持ちが交差していた。次に来店した時にデモテープの感想を伝えたっきり、その後は連絡はとっていなかった。

 

少し前に久々彼のTwitterを覗くと、僕の言う通りにある場所に出向いたらしく、それから知り合いも出来たみたいで、少ないながら地道にライブをしているようで安心した。そして、弾き語りをしている彼には今度のライブを見て欲しいなと思い、久々にDMで連絡をとった。

 

数日後、是非観たいですと返信が来た。車だと割と近いところに住んでいるから、チケットは店頭で販売してるので来店して欲しいと告げた。

 

昨日の夕方店番をしていると、チケットが欲しいとう男性に名前を聞くと、彼だった。髪を切ってマスクをしているから言われるまで全く気がつかなかった。

 

店内に他のお客さんもいたので、ちゃんと話したのは少し経った後だった。てっきり隣の市から来てくれたとばかり思っていたが、いつのまにか転勤で横浜に引っ越しており、今日は電車とバスを乗り継いで来たという。

 

「引っ越したのなら言ってくれれば良かったのに」というと、「たまには温泉にでも入ろうかと思って」とか照れ臭そうに話し出した。

 

そして帰りのバスが来る閉店時間の18時まで、一時間ちょっとお茶を飲んだりして過ごした。

 

以前から感じていた、彼の良い意味で不器用な性格に、今回もなんかほっとけなくなってしまった。話の流れからYoutubeで美味そうな店の動画を見せ、お腹が空くような話をしてから彼を食事に誘った。

 

閉店後、彼を車に乗せラーメン屋に連れて行った。彼は僕がオススメしたものを注文し、静かに食べ終わると「これ美味いですね」と小さい声で言った。駅までの通り道、他に気になっていたタバコ臭い店に入ってみたり、マンガが好きらしかったので古本屋に連れてったりした。

 

古本屋では別行動をしていたが、たまたま合流すると彼は僕が思春期の頃に好きだった「ある漫画」を手に取って眺めていた。簡単に設定とあらすじを伝えると「これにします」と言って、既に手にしていた他のマンガを棚に戻し、真っ直ぐにレジに向かった。

 

駅に送る途中「さっきの漫画に出てくる店みたいなことをしたいと思っていつも営業してる」と話すと、小さな声で「それは余計に楽しみですね」と嬉しそうにしていた。

 

彼と別れ、店に戻りあと片付けをしていると、渡したはずのチケットが置き忘れていた。とりあえずチケットは預かっているから、当日受け付けで名前を言うようにと連絡しておいた。

 

閉店後の行動は、彼になんとかしてあげたかったというより、僕が彼に対する感情をどうにかしたかっただけかも知れない。