September Records

セプテンバーレコードの店主です

火花

昨日、最終上映日だった映画を観に行く為、シャワーを浴びて着替えをしていると、携帯に予期しない予定が入ってしまった。急いで車に乗って出かけてみたものの、結局映画には間に合わなかった。

 

ノンアルコールビールとつまみを買い込み、仕方なく家で『火花(ドラマ版)』の残りを一気観することにした。全て観終わったのは22時頃、思わず号泣したのは第9話だったが、最後まで良いドラマだったと思う。

 

馴染みのある吉祥寺や新宿の風景は没入するに丁度良かった。登場人物に自分を重ねてはいなかったが、高校時代に一緒にバンドをやっていた友達Mのことが何度も頭をよぎった。

 

地元に帰ることは殆ど誰にも言わなかった。すぐ戻ると信じていたから、最後に彼と連絡を取ったのは既に9年も前になっていた。

 

今頃何をしているのだろう。アドレス欄には番号も入っているが、用事もなくかけるのも気が引ける。SNSをやっているタイプではないし、そうやって隠れて覗き見したいと思う種類の友達ではない。きっとまた直ぐに会えるだろう、、そう思って長い時間が過ぎていた。

 

彼だけではない、大学時代につるんだバンドメンバーとは皆それっきりだし、SNSで繋がっている東京の友達とも殆ど会っていない。たまにメッセージをやり取りをしている友達とも、そうして疎遠になってしまうのかなぁなどと思ったりした。

 

今日店は混雑することは無かったが、お客さんが殆ど途切れなかった。一度もゆっくりする事なく、気がつくと窓の外は真っ暗になっていた。随分陽が落ちるのが早くなったなぁと、丸椅子に腰を落とすと同時、入り口の扉が開いた。

 

「こんにちは」と投げかけた先には、Mが立っている様に思えた。よく似ているがマスクをしている為確信はない。昨日の今日の出来事にまさかとは思ったが「Mか?」と尋ねてしまった。

 

「あ、違います」という呆気ない応えが返ってきてしまい、恥ずかしさと行き場のない感情を「最近目が悪くなってしまって、、」と誤魔化した。

 

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そんな昨日からのことをMの携帯にメールしてみようと思ったけど、気持ち悪がられるのでやめておいた。年末までには「レコード屋始めたから遊びに来て」と連絡してみようと思う。

 

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