September Records

セプテンバーレコードの店主です

ヒナゲシとスズメ

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春になるとよく見られる、鮮やかなオレンジ色の野花・ナガミヒナゲシは、外来植物で繁殖力が強く、その場にいる在来種を絶滅させてしまうとかで、地域によっては特定外来種という扱いになっているらしい。

 


去年の今頃も国道沿い所々にこの花が咲いていて、綺麗だなあと思っていたのだが、恐らく駆除の通達でもあったのだろう、ある日を境にばったりと見なくなってしまった。

 


今年も今ならまだあちらこちらに咲いている。毎年のことだから、地域の人はこの花が駆除対象だと知らない筈はない。みんなはその花の儚い美しさを楽しんでいるのかも知れないし、全く気にも留めてないかも知れないが、もうすぐ狩られてしまうこの花のことを思うと、池の水全部抜くが如く、色んな感情が湧いてきてしまって辛い。

 

 

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一昨日のこと。

 


開店準備が終わりPC作業をしていると、入口の方からドン!という衝撃音がした。反射的にそちらを眺めると、まだかすかに何かがドアから落ちる姿が見えた。

 


一瞬雪玉を車道から投げつけられたのかと思ったくらい、重く、唐突で、妙に不吉な音だった。恐る恐る入口に近づいていくと、ドアから50cmくらい向こうに一匹のスズメが倒れていた。倒れたスズメ?という不自然なワードに思わず目を背けてしまったが、勇気を出してその痙攣したスズメを両手に乗せ、小さな花の咲くプランターの縁に沿って頭が上に来るように寝かせてやった。

 


そいつは口にエサを咥えている。巣に戻る途中、ガラス扉が見えず激突してしまったのだろう。

 


何も出来ずに見つめていてもだめだ、急いで店に戻り、キッチンペーパーに水を吸わせ、そいつの口元を潤してやったのだが、飲み込む余裕すらないようでとても苦しそうだった。

 


頭上には仲間であろう何匹ものスズメが鳴いている。突然いなくなったこの子を探しているみたいで辛かった。

 


「頑張れ!頑張れ!」と小さく声を出して回復を祈った。そいつはそれに答えるよう、一度大きく身体を揺らし、くちばしについていた水を飲んでくれたようにみえたが、ゆっくりと目の輝きがなくなって、終いには動かなくなってしまった。頭上にはまだ他のスズメたちが鳴いている。

 


目の前で死を迎えたスズメに、ここ半年間くらいに身の回りに起きた出来事を重ねてしまい、しばらくしゃがんだまま動けなかった。

 

 

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今日はよく晴れた1日だった。昨日とは違って窓から強い光が差し混んでいた。見て見ぬフリをしておいた、ガラス扉に残っていた羽をぞうきんで拭い取り、しっかりしなきゃなぁと自分を奮い立たせた。

 


それにしても今日入荷したアンプは音が良かった。ダフトパンクのアルバムを大音量で流していたのだが、耳障りがなく心地が良い。音の洪水を浴びながら片隅に溜まっていた本を拾い読みしていたが、いつの間にか一つの本に集中してしまったようで、来客にしばらく気がつかずあたふたしてしまった。