September Records

セプテンバーレコード店主のブログ

ビラまきのコジマさん

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今から15年以上前、小田急線のとある駅周辺に住む彼女がいて、デート帰りによく家まで送ったりしていた。いつも駅の構内で青いキャップとベンチコートなどを着てビラを撒く、ひとりの青年がいて、僕らは彼をコジマさんという愛称で勝手に呼んでいた。

コジマさんはいつも、通行人の邪魔にならない絶好の場所に立ち、動作は自然、声の大きさやトーンも街に馴染んでいたし、自分に関係ないジャンルのチラシだったけど、思わず頂きたくなるような、ビラ撒きのプロだった。 .

「今日もコジマさん、いたよ。」と何度会話に出たかわからないくらい、おそらく彼は沢山の人に愛されていたはずだ。

彼女との関係も深まり数年経ったある日、コジマさんにも相棒というか、後輩が出来たみたいで、丁寧にビラ撒きのノウハウを伝授していて二人で楽しそうに仕事をしているのを見かけた。

それから後輩は増え、現場を任せられるようになると、コジマさんはパッタリと見かけなくなってしまった。会えないのは寂しいが、彼の昇進か、あらたな門出を勝手に祝った。

その駅にはそれから何年も通ったけど、コジマさんには会えない。たまに街でビラ撒きをしている人を見ると、コジマさんならこうするのにな、と思い出したりしていた。

それから群馬に戻って四年、ビラ撒きも居ないし、コジマさんの事はすっかり忘れていた。

昨夜から新宿ゴールデン街で朝まで6時間も呑んでうつつを抜かしたあと、371番のカプセルルームに飼われたようでやはり眠れず、ふらふらだけど、無理して 地下にあるいつものポークカレーを食べて、地下階段を上がると、眩しい日光に目をやられたのと同時にビラ撒きの声が頭をぐるぐる。

そういえば、コジマさん今頃何してるのかな、そう思うのと同時、蛍光オレンジのジャンパーを身に纏いビラを撒く、真っ黒に日焼けをしたコジマさんが目の前に現れた。

コジマさん!!なにしてるんですか!!!と声を掛けたかったが、一瞬にして彼の人生がフラッシュバックして立ち止まれず、振り返ることも出来なかった。

今日一日、彼の15年間を想像しながら店に立っていますので、コーヒーでも飲みに来てください。すっきりドリップがオススメ。